登録には2年以上の実務経験か登録実務講習の受講が必要
宅建士の試験に合格しても、それだけで宅建士として仕事を行うことができるわけではなく、受験地の都道府県知事に資格登録をする必要があります。
宅建士として都道府県知事に登録申請するための要件は、宅建士資格試験に合格した上で
- 実務経験2年以上
- 登録の欠格事由に該当しない
こととされています。
この「実務経験」とは、登録申請前10年以内の宅地建物取引業者としての経験、または宅地建物取引業者の下で勤務していた経験のことを指し、そのことを証明する書面も提出する必要があります。
総務や人事、経理、財務等の一般管理部門で、顧客との直接のやたとりない部門に所属した、期間は含まれませんので注意が必要です。
2年以上の実務経験が無い場合でも、実務経験の代わりとして「登録実務講習」という講習を受けることで、登録が可能となります。
また、登録の欠格事由とは
- 成年被後見人、被保佐人、復権を得ていない破産者
- 免許を取り消され、取消しの日から5年を経過していない者
- 免許取消処分前に廃業し、廃業届から5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年、または時効の完成などにより刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 一定の罰金刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年、または時効の完成などにより刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 免許申請前5年以内に、宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした者
- 宅建業に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者
- 事務禁止処分を受け、その禁止期間中に本人の申請により登録の消除がなされ、まだ禁止期間が満了していない者
- 宅建業の営業に関し、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
となっており、宅建士の試験に出題されますので覚えておきましょう。
登録実務講習とは
登録実務講習は50時間の講習となり、うち12時間は通学して直接講師から指導をうけることになっています。
内容としては、宅地建物取引業の実務に関するもので、広告・受付・媒介・物件調査・重要事項説明書面の作成・37条書面の作成・資金計画・税務に関わる内容が主となります。
登録実務講習の講義内容
( )内は学習時間の目安です。
1 宅地建物取引士制度に関する科目(1時間)
・宅地建物取引士制度の概要
・宅地建物取引士の役割及び義務
2 宅地又は建物の取引実務に関する科目(37時間)
・受付、物件調査及び価格査定の実務に関する事項
・媒介契約に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る広告に関する事項
・宅地又は建物の取引条件の交渉に関する事項
・重要事項説明書面の作成に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る契約の締結に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る契約の履行に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る資金計画及び税務に関する事項
・紛争の防止に関する事項
3 取引実務の演習に関する科目(12時間)
・取引の目的となる宅地又は建物の調査手法に関する事項
・重要事項説明の実施に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る標準的な契約書の作成に関する事項
登録実務講習の修了試験は実施機関にその作成と採点が任されていますので、どの実施機関で受講するかによって内容が異なりますが、8割以上の正解で修了証が発行されます。
受講時期に関する制限はありませんが、宅建試験の合格発表後から半年以内に実施する機関が多いようです。
費用は、実施機関によりかなり異なり12,000円~24,000円程度なっています。
具体的に実施機関については下記のサイトをご参照下さい。
合格後1年経ってからの登録の場合
宅建士試験合格後1年を超えてから登録をする場合には、登録する際に「法定講習」と呼ばれる講習の受講が求められます。
また、この法定講習は宅地建物取引士証の有効期間の5年ごとに受講が義務付けられている講習でもあり、宅地建物取引士証を更新する際に、期間満了の6ヶ月以内に実施される法定講習を受講する必要があります。(※宅建士試験合格後1年以内の登録であれば、直近の法改正と判例を知っているとみなされ受講を免除されるという形になります。)
1日6時間の対面の講義で実施され、最近5年分の法改正点と新判例が中心したカリキュラムが組まれます。
法定講習の講義内容
1 紛争事例(判例・監督処分例と実務上の留意点)
2 関係法令(宅建業法、媒介契約、権利関係、法令制限)
講習自体は通常、毎月実施され費用は15,000円前後となっています。
登録に際して必要な書面や手数料
登録の要件を満たしたら資格登録するわけですが、その際には以下のような書面等が必要となります。
宅地建物取引士資格登録に必要なもの
1 登録申請書
2 前科等の欠格事由に該当しない旨の誓約書
3 身分証明書(本籍地の市区町村で3カ月以内に発行されたもので、成年被後見人・被保佐人・破産者でないことを証明する書類)
4 登記されていないことの証明書(法務局の戸籍課で3カ月以内に発行されたもので、成年被後見人・被保佐人でない旨の登記事項証明)
5 住民票(3カ月以内に発行されたもので、申請者本人分が記載されているもの)
6 合格証書(原本とコピー)
7 顔写真(縦3cm×横2.4cmで6カ月以内に撮影したカラー写真)
8 実務経験があることを証する書面
9 従業者証明書(現在出向中の方は出向証明書を併せて提出)
10 営業に関する法定代理人の許可証(未婚の未成年者に限る)
11 戸籍謄本(未婚の未成年者に限る)
12 印鑑(シャチハタ不可)
13 登録手数料(37,000円 ※現金)
さらに実際に「宅地建物取引士証」の交付を受けるために以下のものが必要となります。
宅地建物取引士証交付に必要なもの
1 宅地建物取引士証交付申請書
2 顔写真(縦3cm×横2.4cmで6カ月以内に撮影したカラー写真2枚)
3 印鑑(シャチハタ不可)
4 登録通知(登録申請後30日程度で自宅に郵送)
5 交付手数料(4,500円 ※現金)
なお、宅建士試験に合格後1年以上経過している場合には、都道府県庁では宅地建物取引士の交付は受けられず、法定講習を受講した上で、講習実施機関から取引士証を受け取る形となります。